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Issue : 45
yado local JP | 伝統に学び再編集した、新しい和の家
世界各地の宿に学び、独自の視点で再編集した住宅デザイン「yado local」。このyado localから生まれたのが、「日本」に息づく伝統や美意識をもとにした家「yado local JP(以下、yado JP)」だ。ここにあるのは、懐かしくも新しい、そんな現代の和のあり方を提示する空間。yado JPに込められた、日本のエッセンスとそこに流れる時間を紹介する。
日本の美意識をもとに
新しい和のかたちを表現したyado JP
旅先で得られる高揚感や居心地を、日常でも味わえるように——そんな想いから住宅ブランド「yado」は生まれた。
非日常の「旅」と日常の「暮らし」は、決して分け隔てられたものではない。身を置く空間次第で身体が受け取る感覚は変わるのであれば、旅先で得られる感覚を分解し、家という空間で再設計すればいい。そうすれば、ごくたまにしか味わえなかった旅の喜びを暮らしの中でも常に感じられるようになる。世界中の宿からインスピレーションを受けて生まれる住宅レーベル「yado local」をはじめ、yadoの一連のプロジェクトは、そんな”泊まるように暮らす”日々をかたちにしていくためにある。
今回は「yado local」のラインナップのひとつyado JPから、”泊まるように暮らす”家のあり方を紐解いていく。
「土間」を、現代の文脈で再解釈
日本の伝統的な文化や美意識を独自の視点で解釈・再編集し、新しい和のかたちとして提示したyado JP。ここで流れる時間は、まるで日本の旅館を訪れているときのよう。心静かに過ごしたり、家族や仲間と団欒したり。まさに高揚感と居心地に満ちた家となっている。
そんなyado JPが取り入れているのが空間の余白。ダイニング&キッチン、リビング、3つの個室……この家を構成するそれぞれの空間に、自分次第で暮らし方をデザインできる設計がなされている。
まずその象徴となるのが、土間と一体化したダイニングだ。yado JPの扉を開けた瞬間、目の前に広がるこの空間をどのように使うかは自分次第。
もちろん靴を脱いで、家族がゆっくり団欒できる場として使うのもいい。もしくは、あえて土足で過ごせるダイニングとして気軽にゲストが出入りしながら交流を楽しむ空間としての可能性も広がっている。
もともと土間は、炊事場として使われていたり、客人と家主が語り合う場となっていたり、フレキシブルなスペースとして古くから人々の暮らしに寄り添ってきた。yado JPでは、そんな「土間」という空間が持つ文脈にインスピレーションを受け、デザインに落とし込んでいる。
部屋に広がる表情豊かな風景を楽しんで
土間のダイニングキッチンに面しているのが、まるで小上がりのような雰囲気のリビング。靴を脱いで上がるのはもちろん、靴を履いたまま腰掛けてもいい。土間との連続性を楽しみながら、思い思いに過ごすことができる空間だ。
リビングの床に使用した無垢材は、素足で過ごす心地よさとともに経年変化も味わえる。家族の足跡を家に刻みながら、特別な時を送ることができるだろう。
リビングの上を見上げると、そこに広がるのは開放感に満ちた吹き抜けの心地よい空間。床と一体感のある造作のローソファが天井との距離をより広げ、空間に余白を与えている。
外の風景を切り取るようにデザインされた窓からは、四季の移り変わりを家の中から眺めることができる。また、窓から差し込んだ光は、彩度を落とした壁に当たると独特の陰影を浮かび上がらせ、なんとも言えない表情をつくり出す。家の中にいながら、さまざまな風景を楽しむことができる。
もちろん自分次第で風景をアレンジしてもいい。ノイズを徹底的に排除している空間だからこそ、インテリアがよく映える。お気に入りの家具、美しいと感じた写真、心を惹かれた絵画……そうした作品をこの空間に配置すると、その魅力にもっと気づけるかもしれない。
ローソファに腰掛け、くつろぎながら作品を眺める。まるで旅先にいるような鋭敏な感性のまま、インテリアを楽しんでほしい。
1日の余韻を味わいながら床につく
2階には、心身をゆっくりと癒すベッドルーム。彩度を落としたカラートーンが心を静めてくれる。
また、メインベッドルームにはホテルに設けられているようなデスクが配置されている。和の一辺倒ではなく、ほどよく国外のカルチャーを取り入れた独自の和洋折衷が、安易なノスタルジーに傾倒しない、懐かしくも新しい暮らしの風景をかたちにしている。
書き物をしたり、本を読んだり、今日1日の余韻を味わいながら床につく。そんな贅沢な時間を、ここでなら過ごせるはず。
目が覚めてから眠りにつくまで。
穏やかに流れる時間を丁寧に味わう暮らしを
穏やかな陽の光で目覚めてから、静かな心で眠りにつくまで。まるで旅先の旅館で過ごすように、穏やかに流れていく時間を丁寧に味わう。yado JPから居心地のよい豊かな暮らしが紡がれていくだろう。
Staff Credit
Written by Takumi Kobayashi
Photographed by toha
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