Interior
Issue : 08
“余白”がもたらす心の潤い。wa/ter、5つのプロダクト
なにげなく手に取るものや、さりげなく視界に入るもの。暮らしの空間にあるものは、日々少しずつ、少しずつ心に触れて、気づけば大切な景色の一部になる。デザインに“余白”を持たせてその意味を伝えるプロダクトブランド「wa/ter」から、心に潤いを与えてくれる5つのプロダクトをご紹介。
「wa/ter」を立ち上げた株式会社DRAWERSは、インテリアデザイン事務所であり、淡路島の1棟貸しの宿「ISLAND LIVING」の設計・運営会社でもあります。唯一無二のロケーションや、洗練されたインテリアで注目を集めるその宿と、同じ年に立ち上げたのが「wa/ter」。宿と同じく「暮らし」にフューチャーし、豊かなものにしたいと考える人たちの心に響く、上質で存在感あるプロダクトを生み出しています。
「DRAWERSでは基本的に依頼を受けてデザインしますが、自分たちから動き、時間をかけて何かを作り出したい、という気持ちが芽生え出したんです。そこで実際に様々な作家さんや工芸家の元へ足を運び、いろんな素材や作品を見せていただきました。その中で出会ったのがリサイクルガラス。ガラスといえば板ガラスのイメージがあると思いますが、かたまりにした時の質感や重さがとても魅力的でした。木材を扱う会社でもそんな出会いがあり、一度不要となったものに新たな価値を持たせたいと、このプロジェクトをスタートしました」と、DRAWERSデザイナー・小倉寛之さんは振り返ります。
01 - INCENSE STAND 75φ
まるで山の湧き水を閉じ込めたような清涼感漂う佇まいに、思わず触れてみたくなるお香立て。お香を立てる穴は無機質に開けられたものではなく、水が吸い込まれていくようなデザインが特徴的です。
「お香立てを作った理由は、island livingがある淡路島が、日本有数のお香の産地であること。デザインについては、できるだけ人工的な要素は排除し、自然造形を生かしました。今はなきブラウン管テレビのリサイクルガラスで作ったお香立てですが、手に取った方が好きなように使っていただければと思い、ほとんど手は加えていません」。
小倉さんがそう話すように、一見お香立てに見えない佇まいで、インテリアとしてそこにあるだけでもオブジェとして成り立つ存在感と美しさがあります。「例えばペーパーウエイトとして、またはアクセサリートレーの代わりやブックスタンドに。『こんな風にも使えるな』と考えたり、想像したりすることが心を豊かにすると信じているので、『この用途のためのデザイン』ではない“余白”を作ることを心がけています」
02 -YURAGI Flower vase
フラワーベース「YURAGI」。海や川の水面の波が、光を通して水底でキラキラと揺らぐように、空間に詩的な影を作ります。一見シンプルなデザインと思わせて、とても情緒的な光の演出に目を奪われます。
素材には蛍光灯の再生ガラスを使い、型吹き製法でランダムな凹凸を内側に作ることによって、特徴的な影を生み出します。花を生けない時も、プロダクトそのものがオブジェとして成り立つ存在感があり、収納するのではなく飾るという選択肢が増えるのも、プラスアルファの魅力です。
03 - BUILDING BLOCK
成立する美しい積み木
木工家具作家のアトリエで見つけたという、その過程で廃棄される木の端材。それらを削り出し、同じ形が1つとない積み木に。「自然な木の色味や造形の美しさを残し、握った時に心地よい形や手触りにこだわりました」と小倉さんが言うように、1ピースで1つのプロダクトとして完成された美しさがあります。
手に取った人の想像力が広がるように、積み木でありながら平行線がない。好みの角度を探したり、積んだり、並べたり…と子どもだけでなく大人も時間を忘れて遊べそう。片付けなくても絵になるという点も魅力です。
04 - RECYCLED WOOL BLANKET
らりとした深みのある風合いが特徴的な、RECYCLED WOOL BLANKET。木曽川の良質な水に恵まれた愛知県の尾州は、イタリアのビエラ、イギリスのハダースフィールドに並ぶ世界3大ウールの産地。海外のメゾンからもオーダーが届く名産地なんだそう。
ウールの産地であると共に、60年も前から尾州に伝わるのが「毛七(けしち)」と呼ばれるウールの再生技術。「全国から回収された衣類などを色ごとに仕分けして、そのままの色を活かすんです。おかげで電力や水を大量に使わなくてもいいんですよ。
生地をよく見ると、様々な色や素材の繊維が混ざり合っていて、深みのある風合いを作っています。「元々は何に使われた素材だったのだろう?」と思いを馳せるのもまた心地よい時間。
05 - OLD METHOD
割れが味となるヒノキのスツール
京都の山で育ったヒノキを活用したスツールは、生木を成形し最低限手を加えただけのようなビジュアルが新鮮。触れてみると、ヒノキの香りと柔らかな手触りに心がほぐれます。「割れが入ったインテリアは嫌われるけれど、許容してくれる人の元へ届けたい」と小倉さん。
割れを生かし絶妙な高さにデザインされているので、スツールをはじめコーヒーテーブルやサイドテーブル、時には踏み台など、使い方はその時の気分のままに。
何かの役割に特化しているからこそ「便利なツール」は、暮らしに時間のゆとりと快適さをもたらします。一方で、今回ご紹介した「wa/ter」のプロダクトは、”余白”があるからこそ想像/創造のスイッチを押して心に潤いをもたらすもの。いつもと違う視点で暮らしに「wa/ter」のプロダクトを取り入れてみませんか。
※各商品の在庫状況は流動的です。在庫状況については「wa/ter online shop」にてご確認ください。
Editor’s Voice
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「wa/ter」が生み出すプロダクトは、どれも素材そのものの美しさや質感の気持ちよさを前面に出し、デザインはというと、潔いほどシンプル。自ずとその美しさをどう生かそうかと考える自分がいました。そんな視点で暮らしのアイテムを揃えていくと、自身のクリエイティブな発想も育まれていきそうです。
Ritsuko Tsutsumi (writer)
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とにかくどこをとっても美しい。プロダクトなのに素材そのものを見ているようで、手を加えすぎていない無垢さをも感じ、触れたくなる。日々のそばに置いていたいと素直に思えるものたちでした。
Akari Kuramoto (photographer)
Staff Credit
Written by Ritsuko Tsutsumi
Photographed by Akari Kuramoto