Trip
Issue : 10
LOG –Lantern Onomichi Garden- |暮らすように泊まるおおらかな宿
広島、尾道の小高い山から海を望む「LOG – Lantern Onomichi Garden-」。
その特徴は、昭和38年に建てられたアパートを再構築した建築と、土や和紙などが印象的に使用された手触り感のある空間です。
“最初から100点は目指さない”。今もまだ未完成だというLOGの空間づくりに、 家づくりを楽しみ続けるためのヒントを学びました。
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山並みから瀬戸内の海を望む元集合住宅
広島は尾道に佇むホテル「LOG – Lantern Onomichi Garden-」(以後LOG)。集合住宅として昭和38年に建てられたアパートを、インドの建築集団「スタジオ・ムンバイ」が再構築した建築は客室のほか、カフェ、ライブラリ、レストランなど、多くの居場所を持ちます。
鮮やかに火照る土壁を眺めていると、一見桃色に見えるそれは、赤や黄色、茶色などを混ぜ合わせて出来た色なのだとスタッフの方がすらすらと教えてくれました。ここでは、壁も、椅子も、スタッフ自らが混色し、編み、その手で作り上げているのです。
全面が和紙で覆われた繭のような客室には、外からの光が柔らかく差し込みます。この和紙も、破れたときにはスタッフ自ら修繕しているそう。
ここからはそんなLOGの空間づくりから学べる、暮らしのヒントをご紹介します。
最初から100点は目指さない
スタジオ・ムンバイ代表のビジョイ・ジェイン氏はLOGについて「いまは80%の状態。これから95%まで仕上げていこう」と常日頃スタッフと話しているといいます。
最初から100点を目指すのは、家だってホテルだって大変。完成に満たないその余白に、人は心地よさや喜びを感じるのかもしれません。
心地の良いものを、ちょっとずつ。
LOGに集う人々は皆、“場所を育てる” という感覚を持っています。根底にあるのは、家も、ホテルも、建って完成ではなく、自分たちで軽やかに変えることのできるおおらかな場所であるべき、という考え方。
家を建てるときも焦ってあらゆる家具小物を買い集めるのではなく、暮らしの中でお気に入りを少しずつ集めるのも良いかもしれません。
日常の場所、特別な場所。
もうひとつ印象的だった空間づくりのコツは、“ファンクショナルな部分” と “デザインの部分” を分けるというもの。
自宅の限られたスペースでは、その多くは機能的な空間になりますが、たった一カ所でも、ギャラリーのような特別なスペースを作ることが大切だといいます。ぜんぶ頑張るのは疲れてしまうし続かないけれど、たったひとつの小さな特別なら楽しく愛でることができそうです。
それ、本当に、必要?
LOGでは、部屋のメインである寝室にゴミ箱がありません。他にも、一般的なホテルと比べて備品が極端に少ないのですが、実際には全く困らないのです。
「なぜこれはこの場所にあるべきなのか?」LOGでは、ものに対してそんな問いを立てて、きちんと説明できるものだけを、ゆっくり時間をかけて選んでいるそう。ミニマリストになる必要はないですが、ふとした瞬間に “ものの居場所” に問いをたててみるだけで、違った景色が見えてくるのかもしれません。
yado's pick up item #1
和紙職人ハタノワタル氏の和紙そんなLOGの空間と一体となるインテリアの数々から、実際に購入ができるものをふたつ伺いました。ひとつめは、ハタノワタルさんの和紙。様々なサイズの和紙の箱やコースターは、日常に取り入れやすい一品です。
yado's pick up item #2
硝子職人 横山秀樹氏の器「光に愛されるガラスを置いている」という言葉の通り、光の絞られた仄暗いダイニングでは、横山氏のガラスの器がきらりと上品に輝きます。自宅でも、敢えて光を絞ることで、ガラスの器が集める “普段とは違う光” を楽しむことができそう。
建物は、あくまで箱。そこに人が集まりはじめて空間が息をする。
LOGで一貫して感じた心地よさの根底は、そんな人々の介する余白が無数に散りばめられた “おおらかさ” にあるのかもしれません。
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Editor’s Voice
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この夏プライベートで訪れたLOG、流れる時間と人の温かさにあまりに感動し、支配人の小林さんにすぐさま取材を申し込んだ。取材を通して確信したのは、ホテルをつくるのは建築やサービスではなく、そこで出会う人、ひとりひとりなのだということ。家においても同じことが言えるかもしれません。肩肘はらず、きっとずっと未完成なその家を、愛をこめて手入れする。終わりない家づくりの喜びのヒントを垣間見る貴重な宿泊体験だった。
Rie Kimoto (yado)
Staff Credit
Written & Photographed by Rie Kimoto(HARKEN)
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Hotel Information
About
泊まるように暮らす
Living as if you are staying here.
食べる、寝る、入浴する。
家と宿、それらがたとえ行為としては同じでも、旅先の宿に豊かさを感じるのはなぜなのか?
そんなひとつの問いから、yadoは生まれました。
家に居ながらにして、時間の移ろいや風景の心地よさを感じられる空間。
収納の徹底的な工夫による、ノイズのない心地よい余白……。
新鮮な高揚と圧倒的なくつろぎが同居する旅のような時間を日常にも。
個人住宅を通して、そんな日々をより身近に実現します。Supporters’ comments10
あなたにとって「泊まるように暮らす」とは。
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佐藤 可士和
Creative director 佐藤 可士和
Creative director -
大日方 久美子
Personal Stylist 大日方 久美子
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CEO&Creative director 横川 正紀
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Artist 松田 ゆう姫
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TRUNK CEO 野尻 佳孝
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Editor in chief 村上 萌
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