Trip
Issue : 13
irregular INN Nakijin|みんなで団欒できる、遊びゴコロの詰まった宿
沖縄県今帰仁村ののどかな住宅街に建つ、オルタナティブホテル「irregular INN Nakijin」。 “思い返したいシーンを中心につくる” 暮らしのヒントを伺いました。
“センスの近い友人宅”に泊まるような新しい宿泊体験を
築50年超の平屋をフルリノベーションした「irregular INN Nakijin」。コンクリート住宅が主流の沖縄に、今はもう珍しいセメント瓦で作られた木造古民家を再生しました。
“他にはない、オルタナティブホテル” というWEBサイトの言葉通り、高級旅館や沖縄の古民家、デザイナーズホテルとも違う、独特な空気感が私たちを迎えてくれます。
いろんな人が楽しめる、遊びゴコロあふれる“母屋”
irregular INN Nakijinには2つの建物があり、 天井4.4mの開放的な母屋には、全面ガラス張りの玄関が。見上げると当時の梁や沖縄ならではの瓦造の屋根構造に、歴史と伝統を感じられます。
室内にはふた部屋の寝室があり、それぞれにシングルベッドが2台。ゲストが5人を超えるときには、リビングにある小上がりスペースに折りたたみのマットレスを並べて雑魚寝をするもよし。例えば、友人と家族ぐるみの旅行でも、会社の同僚を連れて打ち上げでも、男女の友人との遊びでも、気兼ねなくワイワイできる空間に。どんな組み合わせでも楽しめる間取りには、オーナーの「いろんな人に楽しんでもらいたい」という想いが詰まっています。
リビングに入るとすぐ目に入るのは、棚にずらりと並ぶ個性的な雑貨たち。愛着を持ってその場に置かれた家具・小物は、いろんな国で作られ、時をまたいでオーナーと出会い、この場所に集いました。オーナーの自宅にあったものを持ってきて、そっと入れ替えることもあるそうです。
一般的なホテルは、作り手のパーソナルな部分に触れることはそう多くはないもの。でもここは作り手の趣味全開。センスの近い友人宅に遊びにきた時みたいな、ワクワクとリラックスが共存する空間が広がっています。
団欒を楽しむ笑い声が聞こえてきそうな“離れ”
そんな母屋を後にし、中庭を挟んだ離れのダイニングキッチン棟へ。充実した調理器具や食器類。ガス式BBQグリルが完備されているため、天候に左右されずに屋内でBBQを楽しむことも。まさに“団欒”を思わせる空間です。
オーナーが選んだ料理本や味わいのある食器を見ると、ちょっと手の凝った料理を皆で作りたくなってしまう。本格的な料理を作ってもいいし、シェフを呼んで、おいしい料理にレストランさながらの個室感を堪能することも。
どこにいても “人” を感じる空間とインテリアが特徴的なホテル、irregular INN Nakijin。ここからはその空間づくりに学ぶ、暮らしのヒントをお伝えします。
思い返したいシーンから設計する
奥さんの出身が沖縄だったため、いつかは沖縄に別荘を持ちたいと考えていたオーナー。でもどうせなら、自分すらも泊まりたいと思える場所を作りたい。そうして独自の世界観を持つirregular INN Nakijinは生まれました。
この場所で過ごしてもらう上で大切にしたかったのが “ゆんたく” の時間。ゆんたくとは、沖縄方言で “おしゃべり” という意味です。沖縄には、気の合う仲間で毎月飲み会を行い、コミュニケーションの維持や、困った時にはお互い助け合う精神を育むための“模合(もあい)” という文化があるように、沖縄人は友達や家族で集まってゆんたくすることが大好き。
irregular INNでも、この沖縄の文化を味わってもらえるようにと、あえて母屋と離れの空間を分け、離れをゆんたくの場所にしたのです。リビングと寝室は母屋に、キッチンとダイニング “だけ” を離れに。場所を分けたことによって、離れで一晩みんなと飲み食いをしたゆんたくの時間がよりいっそう引き立つのです。
インテリアが関係性を深めてくれる
一見、どこの国で作られたものか分からない “ごちゃ混ぜ感” が特徴的なirregular INN Nakijinのインテリア。でも実は、母屋と離れ、それぞれ意図があってセレクトされています。
母屋は、宿に入ってまず最初に訪れる場所。だからこそ、一緒にきた人たちの会話のきっかけになるような、遊びゴコロを詰め込んだ空間に。 まるで宝探しをするみたいに、インテリアを散策しながら心躍る会話が弾みそう。
離れは、ゆんたくに集中できる場所として、8人掛けの大きなダイニングテーブルには、椅子がキュッとくっついて並びます。料理をする人も、手を伸ばせばテーブルに手が届くくらい、いい意味で狭く、団欒の “話す時間” に集中できるのだとか。
yado's pick up item
椅子って同じ種類を揃えなきゃいけないという感覚はありませんか。でも実は、素材感やカラーを揃えれば、形は違っても、それぞれが空間を引き立ててくれる “らしさ” になるのです。
irregular INN Nakijinでは、フランスの小学校の椅子や、教会のチャーチチェアやシェーカーチェアなど、異なるヴィンテージチェアをテーブルの色味と揃えてセレクト。アイアンやラタンなどの異素材がアクセントを生みつつ、まとまり感も作っています。自宅でも、種類の違うお気に入りの椅子をあえて一緒に並べて見れば、遊びにくる友人も、きっと楽しい気持ちになるはずです。
大切にしたいシーンが残るように、家の作りを考えてみること。自分もゲストも思わず楽しくなるような、趣味全開のインテリアを飾ってみること。そんな遊びゴコロが、暮らしをさらに面白くしてくれるのかもしれません。
Editor’s Voice
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母屋に入ってすぐ目に入る、小物たちは忘れられない光景。たとえオーナーがそこに居なくても、オーナーの趣味から性格、朗らかさ、人生を楽しんでいる姿勢を感じられて、なんだか心がほぐれるのです。離れのゆんたくも楽しめること間違いなし。こんなに遊び心がくすぐられる宿は、他にはないはず。心が自由に、開放的になって、大切な人たちとの団欒を味わい尽くせそう!
Maya Mizuta (writer)
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今帰仁の住宅地に突如現れるirregular INN Nakijin。地元の人たちの活気溢れる会話を片耳に一歩敷地内に入ると、細部に施されたオーナーの遊びゴコロとおもてなし。この宿では訪れる度に新しい発見が見つかりそう。
家族や友人たちとゆんたくを楽しんでも、1人気の向くまま身を委ねるも良し。どこかほっとする空間は「また行きたい」ではなく「また帰ってきたい」という表現がぴったりかもしれない。
Aiko Ota (yado)
Staff Credit
Written by Maya Mizuta
Photographed by Kazumasa Harada
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